球速を落とさずコントロール(リリース)を安定させるコツ

最近の質問で「球速を上げるべきなのかコントロールを良くする方が大切なのか」というのが有りました。
そこで下記のようなツイートをしましたので、少し解説して行きたいと思います。

コントロールを気にしすぎて「置きに行っている」と言われてしまう方には役立つ内容かと思いますのでご覧ください。

前足の膝を安定させる事

これは間違いありません。
前足の膝がグラグラしている状態でコントロールを安定させる事はプロの投手でも出来ません。

再現性を高める事が鍵

コントロールを良くするために絶対に必要なのが再現性を高める事。
再現性という言葉に馴染みがない人もいるかもしれませんが、要するに同じフォームで投げましょうという事です。

そのために必要なのがバランスを保つ事。
例えば前足を踏み出す位置がずれてしまうと、当然リリースポイントもずれてしまいます。ですから毎回同じ場所に足を踏み出す事が重要です。もちろん多くの人が分かっている事かもしれませんが、コレが意外と難しいのです。

実際に試してみれば分かるのですが、同じ位置に軸足を置いてシャドーピッチングを行ってみて下さい。本当に1cmもずれる事なく同じ場所に足を踏み出す事が出来ますか?

仮にリリースポイントが1cmずれたとしたら、ホームベース上では約30cmもずれるという話もあります。ピッチングとはそれほど繊細なものなのですが、身体のバランスが安定しなければ、毎回同じ位置に足を踏み出す事すら簡単ではありません。

身体の変化に気づく事

人の身体の状態は日々変化しています。前日にどんなトレーニングを行ったのか、睡眠時間は何時間とったのか、どんな食事をしたのか。トップアスリートは少しでもコンディションを安定させるため、こんな事にまで気を遣っています。

食事と言えば野球界で最も有名なのがイチロー選手の「ビーフを抜いたビーフカレー」ではないでしょうか。
しかも色々な野菜は溶けて見えなくなるまで煮込まれていて、ルーだけのカレーになっています。かなりクセのあるカレーですが、イチロー選手曰く「安定してほしい」という思いからこのようなカレーにたどり着いたようです。

少し話がそれましたが、ここまで気を遣っていたとしても毎日同じ体調で過ごすという事は有り得ません。また生き物ですから、昨日より今日、今日より明日の身体の方が確実に古くなっていきます。ですから毎日同じバランスで投げる事は非常に難しいのです。

視覚を遮断してみる

身体のバランスをチェックする為にオススメなのが視覚を遮断する事。つまり目を瞑るという事です。

人は無意識の内に目から得られる情報で身体のバランスを保っています。目を瞑る事でその調整能力を無くしてしまうと、バランスを取る事がとても難しくなります。

ここで一つ試していただきたいのですが、目を開けた状態で両足の踵を上げて立ってみてください。そしてバランスが取れている時に目を瞑ってみてください。

どうですか?バランスを取るのが一気に難しくなりましたよね。

これを毎日一回でも良いので練習前に取り入れてみてください。段々バランス感覚が研ぎ澄まされていき「今日は少し胸が前にあるな」「今日が頭の位置が少しずれているな」など身体のバランスの変化に対して敏感になる事が出来るでしょう。

力の方向を安定させる

前足の安定を求めるなら、前足に向かってかかってくる力の方向が安定しないと難しくなります。
そのために必要な事は次の通りです。

軸足の膝を遠回りさせない

膝が遠回り?と思った方もいるでしょうが、意外と膝が遠回りしている選手はいます。
度合いにもよりますが、キャッチャー方向から見た時に軸足のつま先よりも膝が前に出てからキャッチャー方向に向かって回り始める選手は遠回りしていると考えて良いでしょう。

【軸足の膝が遠回りしてしまう主な原因】

  1. 軸足にタメようとしすぎている
  2. 重心を移動する際低く入りすぎている
  3. セットから足を上げた時に太腿の前側に力がかかり過ぎている
  4. 下腹が弱く骨盤が前傾している
  5. 前足の使い方によって骨盤が回りにくい状態になっている

上記のうち1、2が当てはまる選手はどうすればもっと楽に投げる事が出来るのか?を考えてみると力の伝え方が変わってくるでしょう。

次に3、4が当てはまる選手は身体の使い方と必要な部位の筋力アップが鍵になります。またバランスを整えるためのトレーニングも必要になると思います。

最後に5が当てはまる選手。コレに関しては少し説明が複雑になるのでイメージしながら読み進めてください。

回転の邪魔をしない前足の使い方

先ず前足の着地の方向がきちんと投げる方向を向いていない場合は修正しましょう。

少しであれば問題無い場合も多いのですが、前足に体重がぶつかる時に前足側の股関節を内旋させて止めている場合、体重が乗り越えられずに球速が上がりにくくなるだけでなく、お尻や腰への負担が大きくなりケガにつながる可能性もあるため注意が必要です。

続いて前足の膝の使い方ですが、上の写真を見てください。

このように前足の踵の垂直線上(より後ろ)に膝が来るようにする事をお勧めします。コレよりも前に出た場合、ある程度までなら“止めよう”という意識があれば止まる事は可能ですが“止まる”感覚では止まりづらくなってしまいます。

またある程度以上膝が前に出てしまった場合は身体が前に流れてしまい、上手く回転出来ずに右半身が出て来ないため左手で引いてしまい、身体が開く原因にもなりかねません。

“蹴り戻す”のか“支える”のか

前足の膝が止まる時に“止める”というイメージを持つよりも“蹴り戻す”イメージを持った方が前足が着地する事によって生まれる地面からの反発を活かしやすいでしょう。

ですが蹴る事を意識しすぎると骨盤の回転の邪魔になってしまったり、重心を上に逃してしまい、ボールが高めに浮く原因にもなりかねません。また太腿の裏側の筋肉が弱いと上手くバランスを取る事が出来なくなり、膝がグラつく可能性があります。そうなると上下だけでなく左右にもコントロールがブレる原因になるので注意が必要です。

“下半身”ではなく○○

良くある話ですが“下半身を鍛える”という表現ではどこを鍛えるべきなのか明確にはなりません。
太腿で言えば前側は脚を伸ばす筋肉。裏側は脚を曲げる筋肉。どちらも下半身。本当にこれで良いのでしょうか?

この記事の中でも“必要な部位の筋力アップ”と敢えて曖昧に表現している部分もありますが、ピッチャーとしてしっかりとフォームを作っていくためにはある程度人間の身体に関する知識が必要です。

特に筋肉の名前や骨の名前、関節がどのように動くかなど理解した上でフォームを考えている選手とただ言われるがまま練習やトレーニングを行っている選手とでは明らかに差が生まれます。

将来的に高いレベルでプレーする事を目標とするなら、細かい部分から目を背けない習慣をつける事をオススメします。

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