この記事の内容
⚪︎速く見えるストレートの秘密
⚪︎リリースポイントとVAA
⚪︎VAAの活用法
速く見えるストレートの秘密
表示される球速は同じなのに、速く見える選手とそうでない選手の違いはどこにあるのか。野球をした事がある人なら誰でも『速く見えるメリット』が非常に大きい事はわかると思います。今回はいくつかあるボールが速く見える理由の中のひとつ【VAA】について取り上げていきます。
VAA(vertical approach angle バーティカルアプローチアングル)とは、ホームベースへのボールの入射角のことを指します。 投手は傾斜の上から投球するためストライゾーンを通過するボールは基本的にはマイナスの軌道になります。
ピッチャーがリリースしたボールがキャッチャーに向かって飛んで来る軌道が、地面と平行を0°とした場合、−4°の時にバッターは最もボールの伸びを感じると言われています。(4S=フォーシーム)
4Sなどの速球系の球種は地面と水平である0°に近づけば近づくほどボールが浮き上がるライジングファストボールのような軌道になり、バッターは”伸びがある”と感じるのです。
※0°はリリースポイントの観点から見てもストライクゾーンに投球する事が不可能
リリースポイントとVAA
シカゴカブスに所属する今永昇太投手はリリースポイントが低い投手として有名です。
2023WBC時の今永投手のリリースポイントは地上から165cmで、MLB平均より10インチ近く低かったというデータも存在します。
低いリリースから回転数の多い4Sを投げ込む事で打者の予測より軌道が落ちず、ボールがバットの上を通過する機会が増えます。下の動画を見ると高いゾーンに4Sを投げ込む事で効果的に空振りを奪っているのが良くわかると思います。加えてピッチトンネルを意識する事でより効果的に空振りを奪う事ができます。
※今永投手の場合4Sの平均回転数がMLB平均の2,200を大きく上回る2,400回転という影響もある
VAAを-4°に近づけるには
VAAを−4°に近づけるために必要なポイントは以下の3つです。
- リリースの高さを下げる
- 出来るだけ打者に近いところでリリースする
- 高めを上手く使う
1と2に関してはメカニクス、3に関しては配球や持っている球種など実戦的な要因になります。
メカニクスに関する注意点としては、リリースを下げようとするあまり肘を引きおろしてしまい、ダーツのような投げ方になってしまうと本末転倒。球威が落ちてホームベース付近での強さを感じないボールになってしまいます。またリリースを打者に近づけるために前に飛び出してしまうのも良くありません。リリースを近づけたければ股関節周辺や胸郭の柔軟性をしっかりと高めるように練習に取り組みましょう。
VAAの活用法
リリースポイントが下がることによるメリットを取り上げてきましたが、これはアマチュアの選手にも非常に有効な技術と言えます。平均的なオーバースローで圧倒的な球速が無い場合は少しアングルを下げ、高めの4Sを上手く活用する事に加えて、その軌道から縦に割れるようなボールを習得する事でバッターからは攻略しづらいピッチャーになる事ができるでしょう。
また身長が低い選手は元々リリースポイントが低いという利点があるため、身体的特徴を活かす投球スタイルを身につけるように工夫が必要です。
まとめ
最後にこの記事の重要な部分をおさらいしておきます。
- ピッチャーが投げたボールの軌道が−4°に近い時にバッターは伸びを感じる
- 必要に応じてアームアングルを下げる事も考えるべき
- リリースポイントは出来るだけ前の方がいい
- 高めの4sと相性のいい変化球を身につけましょう
現代の野球において身長が高い事が有利なのは言うまでもありませんが、戦略によっては身長が低いことを武器にする事もできます。工夫を重ねて自分自身のスタイルを確立しましょう。