肘の痛みはポジションを問わず多くの野球経験者が一度は経験した事があるのではないでしょうか。特に肘の内側の痛みはかなり長引く人が多く、痛みが無くなるまでの期間出場機会を逃してしまう選手や、試合に出るために痛みを隠してプレーし続けた結果、より多くの期間離脱を余儀なくされる選手も少なくありません。ノースローの期間を設けたりケアをするなどの工夫したとしても、肘の痛みが付き纏っている選手も多く、各チームに数人はいるのではないか?と思える程です。そこで今回は肘の内側の痛みの原因とその対策についてご紹介していきます。
肘の内側になぜ痛みが出るのか
先ずは原因を知る事
結論から言えば肘の内側の痛みは投球動作の肘の使い方が原因となっています。ここまでは誰もが分かっている事だと思いますが、今回お伝えしたいのはもっと具体的な肘の内側に痛みが出るメカニズムです。
肘の内側に痛みが出ている選手に対して「肘が痛いのは腕を横から振っているから。肘を痛めないように肘をしっかり上げて縦にきちんと振りなさい。」という指導を受けた事がある方も多いのでは無いでしょうか。確かに肘を上げて縦に振れば身体が横に回転する時に生じる遠心力をある程度軽減出来るため肘の内側にかかる負担は軽減する事が出来ます。しかしこれだけで解決とはなりません。
関節の方向と使う方向
ではここからは肘の痛みがどのように発生しているのか少し掘り下げていきます。肘の痛みの原因の多くは投球動作においての肘関節の方向と力の方向が合っていない事です。実際に体験していただければと思います。
- まず片手でグーを作り、反対の手の人差し指を立てます。丁度“1”の形です。
- 一旦指の関節の方向を確認しましょう。人差し指の関節は曲げ伸ばしは可能ですが、左右に捻れる事はありません。これと同様に肘の関節も正しい方向がわかると思います。
- 次に関節の方向を合わせて(指の腹で)先程作ったグーを1で押してみてください。
- 今度は関節の方向を合わせずに(指の側面で)グーを押してみてください。
※分かりにくい場合はこの記事の一番下の動画でご確認ください
3の押し方であれば関節の方向と力の方向が同じなので強く押しても指のダメージはほぼありません。一方4の押し方をすると関節の方向に対して横向きの力が働く事になる為強く推す事が出来ないと思います。
実際に投球動作で考えると、ボールを投げたい方向に対して肘の方向が合わず、肘の関節の方向と違う方向に力が働くのを無理矢理靭帯や筋肉を使って使おうとするため靭帯にストレスがかかり、痛みが生じてしまいます。
ですから単純に腕を上から振り下ろすだけで(関節の方向が正しい方向に合って)痛みがなくなる事も有りますし、たとえ横から投げていたとしても関節の方向と力の方向さえあっていれば痛みは出てこなくなるのです。
肘を痛めない為の投げ方とは
関節の方向が合わない原因
トップを作った段階で肘が両肩を結んだ線の延長線上よりも低い位置にある場合、関節の方向を合わせる事が難しくなります。ただし胸郭のしなりなどで肘の位置が低く見える場合も有りますので一概に全てが悪いとは言い切れません。肘の位置を両肩よりも少し上に上げておく必要がある理由は、肩関節への負担を軽減するという意味も有ります。
肘の方向は肘関節単体で決まるわけではありません。肘の方向を決めるのに大きく関与するのが肩関節です。肩関節は球状関節であり、様々な方向に動くため肘の方向をコントロールする事が可能になります。そして肩で肘の方向をコントロールする時に鍵になるのが肘の高さです。
肩は極力使わない事が重要
先ほど肘の関節の方向を決めるのは肩と書きましたが、肩関節を使いましょうという意味ではありません。むしろ投球動作において肩関節は極力使うべきでは無いと考えています。肘を両肩のラインよりも低い位置で動かそうとした場合、肩関節への負担は大きくなります。
また肘が上がらないままで回転運動が始まってしまうと、回転に対して腕が遅れた形になってしまいます。この時腕の遅れを取り戻さなければリリースに間に合いません。ですから肩関節の周りの筋肉を使って遅れを取り戻そうとしてしまいます。この時肩の前側の負担が大きくなり、痛みを生じる原因になります。
まとめ
今回紹介した理由以外にも肘の内側に痛みが発生する原因はありますが、痛みが発生している原因の多くは今回のパターンであると言っていいでしょう。自分でフォームを確認する場合は横からではなく正面もしくは真後ろから動画を撮影すると確認しやすいのでおすすめです。肘の痛みは選手生命を脅かすほどのケガにつながる恐れもあるため看過する事は出来ません。この記事の内容に当てはまる方はしっかりと改善して頂ければと思います。