今回は結構苦手な人も多い“グラブの使い方”についてお話しします。
グラブの使い方によっては
- 球速が伸びない
- コントロールが安定しない
- 肩や肘、腰への負担が大きくなる
など多くのデメリットが起こり得ます。パフォーマンスを上げるためには知っておくべき内容です。
目次
投球時のグラブの役割
グラブの使い方と言えば飛んできたボールを捕るためでしょ!と言われればそうなのですが、実は投球フォームの中でもグラブはさまざまな役割を持っています。
重さや大きさ、紐の閉じ方(縦とじ・横とじ)など細部にまでこだわっている選手も少なくありません。先日もヤクルトスワローズの奥川恭伸投手が契約しているミズノ社に「型は同じで軽量化をしてほしい」という要望を出したという記事が出ていましたが、ステップする際や回転時などグラブの大きさや重さがフォームに与える影響は決して小さくありません。
縦とじと横とじ
画像は縦とじと横とじのグラブの画像です。このように綴じ紐の通し方で縦とじのグラブは縦に二つ折りに使いやすく、横とじのグラブは斜めに捻るように使いやすいという特徴があります。
このグラブの特性を利用して、オーバースローで体を縦に使う選手は縦とじ、スリークォーターやサイドハンドの選手や体を斜めや横に回転させるため横とじのグラブを使う方が良いという専門家の方もいます。
レベルが上がれば上がる程、ほんの僅かでも進化する可能性があるなら試したい!という選手が増えるため、メーカー各社の開発により、グラブは常に進化し続けています。
バランサーとしての役割
フォームを安定させる事は安定したパフォーマンスを発揮するためにも非常に重要な事です。そしてフォームを安定させるためにはバランスが保たれる事が重要です。
例えばいつも使っているグラブより少しだけ重いグラブを使うと、その分バランスが崩れて体の開きが早くなってしまったり、重心が前に引っ張られて突っ込んでしまう事も考えられます。パフォーマンスが落ちるだけならまだ良いのですが、この変化によって体に良くない負荷がかかりケガのリスクを高めてしまう事も考えられます。
ですから常に重さを一定に保つために極力グラブの手入れをせず、ワックスなどをつけない選手もいるほどです。
パフォーマンスを上げるグラブの使い方
“グラブを使う”とは要するに投球側ではなく反対の腕(右投手なら左腕)の使い方を表していますが、大きく分けると以下の3つです。
- バランスを取る
- 回転をサポートする
- 体重移動をスムーズにする
もちろんこのバランスを取るの中には早い段階で体が開くのを防ぐ動きや、回転をサポートするの中には腕を引く事で回転を加速することなども含まれます。それでは少し具体的に解説していきます。
縦回転と横回転
縦回転・横回転とは骨盤がどう回転しているかということです。
分かりやすい例で言えば、広島カープの森下投手やソフトバンクのモイネロ投手は縦回転です。
一方で横回転の分かりやすい例はソフトバンクの嘉弥真投手です。
両者の違いが分かった所で、先ほどの縦とじ・横とじの話に戻ると・・・
もちろん縦回転の森下投手は縦とじ。と言いたいところですが、asicsの横とじのグラブ(オリンピック決勝など)を使用しています。つまり“絶対にこうあるべき”というものではないという事。考え方の違いや使いやすさ、グラブは横とじであっても腕は縦に使うなどそれぞれの選手が工夫を重ねているので、自分が理想とする選手を参考にするのもいいでしょう。
腕を引く方向には注意が必要
一点注意する必要があるのが、投球側の腕を振る角度とグラブ側の腕を使う角度は対角になる方が良いでしょう。
実際にやってみると分かりやすいのですが、オーバースローのように腕を縦に振りながらグラブを横に引くと、肩は横に回転してしまいます。これでは体の回転と腕の方向が合わず、体にも腕にも負担をかけてしまいます。もちろん腕を横に振りながらグラブを縦に引いても同じ事が言えます。
体重移動をスムーズにする
グラブ側の腕で体重移動?と思われる方もいるかもしれませんが、投球時に体が回転する際の支点の役割も担っています。
画像で分かるようにグラブを支点として体をグラブに向かって寄せながら回転する事で作用点であるボールを引き出す事が出来ます。ただしこの使い方をするためには前足の股関節でしっかりとストップが出来る事、上半身が突っ込まず頭が後ろに残っている事などの条件が揃わなければ上手く行きません。
その場合は下の画像のように体幹部を支点、グラブを力点、ボールを作用点という形で意識するのも良いでしょう。
まとめ
今回紹介したのはあくまで例に過ぎず、ピッチャーが10人いれば10通りのグラブの使い方があると言っても過言ではないほど、色々な使い方をしています。またグラブの中の手も、小指の部分に薬指と小指の2本を入れている選手やオリックスの山本由伸投手のように中指を出す(流石に特殊ですが)選手もいます。
ですから「普通」や「一般的」という言葉に左右される事なく、自分自身が投げやすい形を模索していく必要があるでしょう。色々と研究してみてください。